第1章 始まりの日

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そんなことを考えているうちにバスは学校近くの停留所に着いた。 バスを降りて学校まで歩きはじめた。 相変わらず眠気は残っている。 学校に着いて僕はまず学ランを脱いだ。 5分ぐらいしか歩いていないのに汗ばんでいた。学校は冷暖房完備だが冷房は11月で暖房に切り替わる。 去年はそれで良かったが今年はそういうわけにはいかない。 でもそんな予想は誰にもできないから今年も例年通りになってしまった。 始礼まで寝ようと机に顔をつけようとした時だった。 「おっす、まっちゃん!」 と言って慎司(しんじ)が来た。 村木慎司(むらきしんじ)、僕のクラスメートでいわゆる親友というやつだ。学力は低いが運動神経は校内上位。テニス部に所属。性格は良く言えば活発、悪く言えばお調子者(おちょうしもの)。 「なんだよ。」 「なんだよまっちゃん、今日はずいぶんとつれないじゃん。」 「昨日夜遅かったから眠いんだよ。」 夜遅くなったのは自業自得(じごうじとく)なので慎司にあたるのは余りに理不尽だとは思ったが、睡眠を妨げられたこともあり、若干苛立ちのほうが勝(まさ)ってしまった。 「まっちゃん朝弱いくせに夜更かししたのかよ。」 「うっせえな。」自覚していることを人に言われるとムカつく。 「なにしてたんだ?」 「べつに。ただなんとなくテレビ見てたら、1時になっちまって。」 「へぇ~。そりゃ俺でも朝起きるのはキツいな。」 「それより、なんか用か?」 ときいたが、僕にはだいたい予想がついていた。朝、慎司が僕のところにくる理由はだいたい決まっている。 「まっちゃん宿題やったか?」 そう慎司が言いきる前に僕はカバンからノートを2冊取り出した。 「ほら。」 「サンキュー。やっぱ持つべきものはなんとやらってやつだな。」 と慎司がいつもの調子で言った。 すると背後から 「まったく、たまには自力でやんなさいよね。」 「杏奈(あんな)!?」 僕が振り向くとそこには腕を組んで立っている杏奈がいた。 橋下杏奈(はしもとあんな)、小学校からの付き合いでいわゆる幼なじみというやつだ。学力、運動神経ともに学年上位。水泳部に所属。強気な性格。 「あんた、そんなに人にばっか頼ってたら、将来困るわよ。」 「うるさいな。親みたいな言い方すんなよ。」 杏奈は僕たちに対していつも上から目線でものを言う。
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