第1章 始まりの日

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「それより雅人(まさと)。」 「なに?」 「私にもノート見せてくんない?」 そういうと杏奈(あんな)は慎司(しんじ)からノートを取った。 「なんだよお前、さっきまで人に頼んなって言ってくせに。てか、俺が先に借りたんだぞ。」 「わかんないとこだけ見るのよ。あんたみたいに丸写しするわけないじゃない。」 そういうと杏奈はノートを開いた。 「さすが学年1位。よくこの問題わかったわね。」 「学年1位じゃねぇよ。」 「なに言ってんだよ。期末だって中間だって学年1位だったじゃん。」 「成績上はな。」 そう成績上は・・・。 「?」 わけがわからないというように杏奈と慎司は顔を見合わせた。 「それってどういう・・・?」 杏奈がきこうとした時。 「初礼やるぞ、席に着け。」 先生が入って来て、話は中断された。 「欠席は・・・大城(おおしろ)だけだな。はい、じゃあ今日は・・・。」 大城また休みか。 大城拓海(おおしろたくみ)、学力、運動とも学年1位。それ以外のことはよく知らない。 彼は、高2の1学期後半から学校を休むようになった。初めは1週間おきぐらいだったけど、徐々に間隔が狭(せば)まって、2学期になってからはまだ1日も来ていない。学校中では様々な噂が流れた。 引きこもりになったとか、誘拐されたとか、学力が認められて大学へ進学したんじゃないかとか、いろいろ。 でも日をおうごとにそんな噂は消え、それと同時に大城の名前も生徒の間から消えた。 そんなことを考えていると 「騎馬(きば)!聞いているのか?」 急に先生の罵声(ばせい)が耳に入ってきた。 気がつくと、すでに授業が始まっていた。 「す、すいません。聞いてませんでした。」 「夜遅くまで勉強するのはいいが、体調管理はしっかりしろよ。」 「は、はい。」 「じゃあ、村木(むらき)、お前、代わりにこの問題解け。」 「えぇ!?」 「早くしろ。」 はぁ、やってしまった。 周りが若干(じゃっかん)笑ってる。 恥ずかしい。 なんで大城のことであんなに考えてしまったんだ? 自分でも不思議だ。
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