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「それより雅人(まさと)。」
「なに?」
「私にもノート見せてくんない?」
そういうと杏奈(あんな)は慎司(しんじ)からノートを取った。
「なんだよお前、さっきまで人に頼んなって言ってくせに。てか、俺が先に借りたんだぞ。」
「わかんないとこだけ見るのよ。あんたみたいに丸写しするわけないじゃない。」
そういうと杏奈はノートを開いた。
「さすが学年1位。よくこの問題わかったわね。」
「学年1位じゃねぇよ。」
「なに言ってんだよ。期末だって中間だって学年1位だったじゃん。」
「成績上はな。」
そう成績上は・・・。
「?」
わけがわからないというように杏奈と慎司は顔を見合わせた。
「それってどういう・・・?」
杏奈がきこうとした時。
「初礼やるぞ、席に着け。」
先生が入って来て、話は中断された。
「欠席は・・・大城(おおしろ)だけだな。はい、じゃあ今日は・・・。」
大城また休みか。
大城拓海(おおしろたくみ)、学力、運動とも学年1位。それ以外のことはよく知らない。
彼は、高2の1学期後半から学校を休むようになった。初めは1週間おきぐらいだったけど、徐々に間隔が狭(せば)まって、2学期になってからはまだ1日も来ていない。学校中では様々な噂が流れた。
引きこもりになったとか、誘拐されたとか、学力が認められて大学へ進学したんじゃないかとか、いろいろ。
でも日をおうごとにそんな噂は消え、それと同時に大城の名前も生徒の間から消えた。
そんなことを考えていると
「騎馬(きば)!聞いているのか?」
急に先生の罵声(ばせい)が耳に入ってきた。
気がつくと、すでに授業が始まっていた。
「す、すいません。聞いてませんでした。」
「夜遅くまで勉強するのはいいが、体調管理はしっかりしろよ。」
「は、はい。」
「じゃあ、村木(むらき)、お前、代わりにこの問題解け。」
「えぇ!?」
「早くしろ。」
はぁ、やってしまった。
周りが若干(じゃっかん)笑ってる。
恥ずかしい。
なんで大城のことであんなに考えてしまったんだ?
自分でも不思議だ。
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