第1章 始まりの日

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4時間目は体育だ。 更衣室でスポーツウエアに着替えてから慎司(しんじ)と外へ出た。 「では、今日も前回同様マラソン大会の練習をやる。今日はトラック20周だ。10分後にスタートする。各自アップをしておけ。」 先生の指示で僕たちはアップを始めた。 「はぁ、マラソンの練習か。嫌だな。」 「なにいってんだ。お前走るの得意だろ?」 「そうだけど、長距離って結構かったるいし、4時間目だから余計にな。」 「まぁ、たしかに腹へってる時に走るのは結構キツいけどな。」 「それに最近は結構暑いしね。12月だっていうのになんでこんなに暑いのよ!まったく。」 「うわ!?杏奈(あんな)!」 「なに驚いてんのよ。私が居たらおかしいの?」 「だってお前女子は・・・。」 「女子もここでアップなのよ。」 そういうと杏奈は屈伸(くっしん)をはじめた。 「だからって、俺らのとこに来なくても・・・。」 「あら、お邪魔だったかしら?」 「べつに邪魔じゃないけど・・・。」 「じゃあ、いいでしょ?」 周りを気にする慎司をよそに杏奈はストレッチを続けた。 男子の中に女子が1人というのも変だけど、さすがに慎司は気にすぎだと思う。 最近思ったことだけど、慎司は杏奈の前だと神経質になるというか、俺とか他のやつ(女子も含め)といる時より明らかに違う。 なぜだ? 「よし、そろそろ始めるぞ。位置に着け。」 先生に言われ、僕たちはスタート位置に向かった。 「よし、まっちゃん勝負だ。負けたほうは飯(めし)おごりだぞ。」 「いいぜ、今月は金がヤバいから助かるよ。」 「まだ、お前が勝ったとは決まってないだろ?」 「でも、今んとこは俺のほうが早く終わってるから勝負は見えいるけどな。」 「今日は勝つさ。飯がかかってるんだからな。」 そんな話しをしながらスタート位置に着くと 「なになに、私も入れて。」 後ろから杏奈が声をかけてきた。 「だめ。」 慎司は即答した。 「えぇ~なんでよ~?いいじゃない。」 杏奈が不満げに言う。 「だって女子とは距離違うじゃん。な、まっちゃん。」 「俺はべつにいいけど。」 「えぇ!?なんでだよ?5周も違うんだぜ?」 「そのほうが、おもしろい。」 「な!?」 僕の言葉に慎司は固まった。 「どうせ勝つのは俺だしな。」 「さすが雅人(まさと)。でも、勝つのは私よ。」
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