0人が本棚に入れています
本棚に追加
村を出る際、いろいろなところから出ようとするが、マイルがどうしてもついて来る。
「マイルか…」
アヴィンはため息混じりに言う。
「いつも一緒だよ」
と言ってマイルは微笑む。
この微笑みには少々理由があって、アヴィンはいただけない表情を隠せない。
「勝手にしろ」
そう言ってアヴィンは歩き出す。
二人が暮らしていた村から外に向かう道にはあらゆるモンスターが待ち構えていて倒しながら次の街まで進んで行った。
数年後、アヴィンはとある会社に入った。そこではいろいろな価値観の人たちと出会え、人生的にも幅の広い視野に立てる機会を貰ったような気がした。
アヴィンは会社のベンチに座って、ほっと一息ついていた。
「天気良いな」
ふとそうつぶやいて、瞬きすると木漏れ日が目に眩しかった。
こんな金曜日の昼下がりにこうやって一人で過ごせるなんて…。
至福を感じながらぼーっとしていると、遠くから聞き慣れた声がする。
あいつだ…!
目の前が一瞬暗くなってまた元に戻った。
「アヴィン」
マイルが顔を覗き込んでいたのだ。
びっくりして退くが、続けて「一緒に食べよう?」 と言ってくる。
アヴィンはさっき食べたばかりだったので断ってその場を後にした。
あいつときたら、何故自分と同じ会社にいるのか、腐れ縁だとしても、絶対に嫌だ!
アヴィンには弱みがあった。
それは村から出る前も、出た現在もそれに束縛され、悩んでいた。片時も忘れられない苦痛に胸は張り裂けんばかりだった…。
休憩が終わりオフィスに戻る。みんなパソコン入力したり、資料を提出したりして励んでいる。
アヴィンも自分のデスクにつき、資料を読み取り、パソコン入力し始める。
「アヴィン君」
「あ、先輩」
仕事の終わりに自分の席まできたダグラス先輩だった。何か用があるようなので、帰り支度を止めて聞く。
「今日、うちの部署に匿名の…」
話しの途中だったが、心臓がバクバクと鳴った。以前からだが、自分が入社して1ヶ月も経たない時期からかかってくるものであった。
最初のコメントを投稿しよう!