0人が本棚に入れています
本棚に追加
背筋がぞっとした。
匿名の電話の続きは
「アヴィン…スコーーゴボゴボゴボ…カナラズヤゴボッ…ミツケダシテヤル…」
ということだった。
いつか見つけ出すことが前提なのは大した自信だが、そのようなことをしてまで追い回すのはやはり必要な「人材」だからであろう…
「あんま気にしなくて大丈夫だよ」
とマーティは暗く落ち込むアヴィンを見て、笑顔で励ましてくれた。
明日もあるし、落ち込んでいても何も良いことはないだろうと思い、気にしないようにする。
しばらくあんなに五月蝿かった匿名の電話もかかってこなくなった。
村で不幸でもあったのだろう…
人が死んだのに喜ぶのはおかしいことだが、今の状況から言って都合の良いことこの上なかった。
臨時休暇だと思って楽しくすごそうと思った。
アヴィンは今週末、友達と夕食に出かける予定だったので、大いに楽しもうと思った。
仕事場はのほほんとした雰囲気で失敗しても怒られないし、みんなは優しいし、良いところだった。
村の連中に嗅ぎ付けられなければずっといたいそういう職場だった。
「アヴィンさんこの資料お願いします」
「あいよ」
アヴィンは資料のグラフ作成を任されたところだった。
アヴィンはさっそく資料作成に励んだ。
村村の作物生産高だったチブリ村……23%
コルナ村……89%
ウルト村……3%
「………」
ウルト村…!!
毎年ながら低い生産高を表していた。
そう思い出せば、アヴィンが子どもの頃も食物の生産高が低い時期が続いて大人達が困っていたこともあった。
アヴィン自体も食物が少なくていつ飢え死にするかも分からない状況だったのを覚えている。
飢饉や干ばつが原因だったが、次の年はかなり豊作だった気がする。
飢饉が来ても次の年は大丈夫だと家のばぁ様も言っていたのを覚えている。
それがなぜかは分からなかったが…
アヴィンは嫌なものを思い出したとため息をついた。
窓の外にふと目をやると、空を高いところにトンビが飛んでいる。
太陽が眩しくないのかと思うくらい高いところに。
夏ももう終わりが近い今日この頃だが、夏の名残を残した風景に温かみを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!