175人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前にそびえていたコンクリートの壁を突き破って人間の腕が飛び出てきたのだった。
その腕は少年の顔を鷲掴みにすると、恐ろしい怪力で締め上げながら少年の体を釣り上げたのである。
「!!!」
アイアンクロー。
その激痛に声にならない悲鳴を上げた。
少年は自分の頭を掴む白くて長い腕に掴みかかったが、そこに込められた力は微塵も緩まなかった。
目の前のコンクリートを突き破って現れたのは、マントの怪人だった。
怪人の背後には無数のコンクリートの残骸が転がっていた。
どうやら入り組んだ路地の中、壁を破壊して一直線に追ってきたらしい。
なんて非常識!
しかもこのままで接近されたというのに、気配どころか物音一つ聞こえなかった。
やはりこの相手は常識外の能力を持っているようだ。
もっとも、今の少年に余計なことを考える余裕はなかった。
大柄ではないとはいえ、男子高校生を片手で軽々釣り上げる相手の怪力は異常だ。
このままでは少年はザクロのように握り潰されるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!