プロローグ

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目の前にそびえていたコンクリートの壁を突き破って人間の腕が飛び出てきたのだった。 その腕は少年の顔を鷲掴みにすると、恐ろしい怪力で締め上げながら少年の体を釣り上げたのである。 「!!!」 アイアンクロー。 その激痛に声にならない悲鳴を上げた。 少年は自分の頭を掴む白くて長い腕に掴みかかったが、そこに込められた力は微塵も緩まなかった。 目の前のコンクリートを突き破って現れたのは、マントの怪人だった。 怪人の背後には無数のコンクリートの残骸が転がっていた。 どうやら入り組んだ路地の中、壁を破壊して一直線に追ってきたらしい。 なんて非常識! しかもこのままで接近されたというのに、気配どころか物音一つ聞こえなかった。 やはりこの相手は常識外の能力を持っているようだ。 もっとも、今の少年に余計なことを考える余裕はなかった。 大柄ではないとはいえ、男子高校生を片手で軽々釣り上げる相手の怪力は異常だ。 このままでは少年はザクロのように握り潰されるだろう。
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