プロローグ

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その異常を感じ取って少年は逃げたわけだが、怪人間は逃げる少年の存在に気づいた。 目撃者は赦さないというわけか、それ以来少年は追われる身となったのである。 もうどれくらい走っただろう。 何時間も追われているような気がするが、実際はせいぜい十分足らずの時間だろう。 背後から迫る恐怖が時間の感覚を狂わせていた。 と、今度は横手にあった自動販売機が破裂した。 中からジュースなどが周囲に散乱した。 破裂音に重なるように悲鳴を上げつつも、少年は逃げる足を緩めなかった。 少しでも足を止めれば、その瞬間に殺される――生存本能がそう告げていた。 走りながら、チラリと背後を見た。 追ってくるのは、赤黒い、固まった血のような色のマントで全身を包んだ長身の怪人。 頭にも同じ色のフードをかぶっているため顔はわからないが、その身長は二メートルをゆうに越していた。 怪人は滑るような動きで、音もなく少年を追ってくる。 その白く、細長い腕がマントの間から伸ばされるたびに、少年の周囲で新たな爆発が起こった。
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