プロローグ

8/12
前へ
/373ページ
次へ
少年は覚悟を決めて路地に逃げ込んだ。 少年にとって唯一の利点は、ここが彼のホームグラウンドということだ。 生まれてから十五年にわたって住み続けた街。 この街にある道という道で少年が歩いたことのない道はない。 入り組んだ路地だって、少年にとっては庭も同然だ。 地の利を活かして相手をまこうという作戦だ。 デタラメに路地の間を駆け抜けていく少年 この辺りは無計画な都市整備の結果として、路地が迷路のように入り組んでいる。 一度迷い込めば、地元民でも抜け出すのに苦労するほどだ。 ここならば逃げられる――少年はそう確信していた。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

175人が本棚に入れています
本棚に追加