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路地を走ること五分――振り向いて、背後に追跡者の姿も気配もないことを確認し、少年はようやく息を整える余裕を得た。
壁に背中を預けて立ち、少年は噴き出る汗を制服の袖でぬぐった。
「まったく、冗談じゃないぞ、クソ」
毒づいても仕方ない。
今はなにより、逃げ切れたという事実を喜ばねば。
「でも……あいつらは、なんなんだ?」
ただの人間が空を飛んだり、さっきみたいに爆発を引き起こしたりすることができるはずがない。
それはまるで超能力、あるいは魔法みたいなものだった。
「魔法……魔なる力?」
少年は違和感を覚えた。
魔法という単語を思い出そうとすると、どうも頭に引っかかる。
そう、彼は確かに子供のころ、
魔法使いに――
――突然目の前の壁が砕けた。
なにが起きたのか、理解するのに時間がかかった。
そして理解したときには、少年はすでに逃げられない状態となっていた。
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