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部屋を立ち去ろうとしたエッジを文官の男が呼び止めた。
「ラインハルトさん、私達は必ずあなたから良いお返事を戴けると信じています」
確信的な口調に、少しばかり笑みがこぼれる。
「まるで俺が心変わりする確信が有るような言い方だな」
何も答えず、ただジッとエッジを見返すだけ。
「どんな秘策が有るかは知らないが……代わりを探すことをオススメするよ」
それだけを言い残して、エッジは部屋を後にした。
扉が閉まった瞬間、2人は脱力してソファに沈み込んだ。
「はぁ、突然気迫があれ程変わるとは思いもしませんでした」
疲れたように文官の男は言った。
「うむ、もう少し無理矢理にでも引き込めるかと思っていたが……結局、終始主導権を握られたままであったな」
2人共に疲労の色は濃く、相当な緊張感の中でやり取りをしていたことが伺えた。
「しかし、将軍。今回の機会は中々に貴重だったのでは有りませんか?」
うっすらと疲れの残る笑みを浮かべて、文官の男は訊ねる。
「あなた自身が"直接"彼と会うのは初めてだとお聞きしています」
武官の男は押し黙ったまま。
「ご印象は如何でしたか?」
「悪くは無い、寧ろ十二分過ぎるほど立派に成長していたと言える」
そう語る視線は何処か別の場所を見ていた。そして、小さく呟く。
「時が経つのは早いものだ……」
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