物語の始まり

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王宮の部屋を後にして約30分、エッジはようやく市街地と城を隔てる廓門の前までたどり着いていた。 「無駄に広い分、無駄に疲れるな」 廓門から王宮までは2㎞近い距離が有り、徒歩だとかなり疲れる距離である。 その為、馬や馬車の姿も多く見受けられた。現に廓門の前では荷馬車が多く行き交い、多くは食料品や日々の雑貨などを積んで城の中へと入っていく。 馬車の行き交う道の端を歩いているとき、不意に背後から呼び止められた。 振り向けば、そこに居たのはこの2~3ヶ月、常にエッジの側に付き纏い登城を再三に渡って求め続けていた城使いの少女だった。 「なんだ、お前か──」 「断ったそうじゃな、どうしてじゃ?」 面倒そうに言ったエッジの言葉を無視して、少女はエッジに訊ねた。 「何でお前が知っている?」 「王女殿下がナブレス将軍とシルム宰相から報告を聞いて、妾に理由を聞いてくるよう言われたのじゃ」 ナブレス将軍、シルム宰相と言えば先程まで王宮で話をしていた武官と文官の2人だ。 「将軍達は何も言わなかったのか?」 その問いに一瞬、少女の顔が陰った様に見えた。 「何も……言わなかったそうじゃ」
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