序章

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周りを囲んでいた人々が、また騒然となる。 少女と相対していた男の1人が剣を抜いたからだ。 研ぎ澄まされた輝きが、如何に刃が鋭いかを物語っている。 男達が少女の腕を掴もうとした手を少女が叩き落とした事が相当頭にきているらしい。罵声を上げたのもそれが理由だ。 「大人しくしていれば痛い目を見ずに済んだのによ」 男の声は怒りに震えている。 右手に持った剣を頭上へと振り上げ、そして、躊躇い無く少女へと振り下ろされた。 顔を背け、強く目を閉じる少女。周りからも悲鳴が漏れる。 少女の顔に飛沫が掛かった。だが、それだけで痛みが無い。 目を開けると、男と少女の間に1人の青年の姿があった。 その青年は少女がこの1ヶ月ピッタリとくっついて追いかけ回していた人であり、男の子を助けに入る直前まで後を付けていた人だった。
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