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青年の右手には振り上げられた一振りの太刀が握りしめられており、その刃は赤く濡れていた。
少女に向けて振り下ろされた剣は視界に無く、その男の腕は肘から先が消えていた。
そして、ほんの数秒遅れて石畳の上に何かが金属音を立てて落ちた。
それは、少女に向けて振り下ろされた剣であり、握っていた男の腕もまた、共に石畳の上に転がっている。
少女も斬られた男もその周囲に群がる群衆の中にも、誰一人として何が起きたかを理解出来た者は居なかった。
「ああぁぁぁ!う、腕が!腕が!」
遅れて脳へと伝わった激痛に、男は背中から石畳へと倒れ込む。そして、身をのたうちまわらせると共に絶叫した。
「て、てめぇ!何しやがっ……」
苦痛に悶える仲間に駆け寄った男二人は、怒りの矛先を向けるべき相手を睨みつけ脅すはずだった。
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