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だが、振り向くと同時に彼等の表情は凍り付いてしまった。
彼等の視界に入ったのは、自らの眼前に突き付けられた、依然として温かみを残す血が濡れ滴る刃先。それに、背後からの逆光で人型に切り取られた漆黒の影に浮かぶ、獲物を狙う猛禽類に似た眼光鋭い冷徹な双眼。
動物が本能的に感じ取る恐怖が、身体を地面に縫い付けられたかの様に動けなくさせる。眼球一つ動かすことも出来ず、呼吸すらも酷く重労働に感じれる。
逆光の影の中で、青年の口が動いた。
「失せろ」
短い単語。
だが、その声が発せられ彼等の鼓膜を震わせた瞬間、身体は自らがすべき事を思い出したかの様に自由になった。
そして、頭の奥底──生きるための本能が叫ぶ。
逃げろ、逃げろ!!
傍らで呻く男の肩を担ぎ上げ、恐る恐る青年の眼を見る。
依然として鋭い眼光が輝いている。
その姿に、捨て台詞すら吐くことなく脱兎の様に逃げ出した。
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