物語の始まり

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話の切り出し方は実に単刀直入、聞いた瞬間に面食らった位だった。 「エッジ・ラインハルト、お前に一軍を率いてもらいたい」 真剣な表情に非常に落ち着いた口調。余りにも真面目な態度でそう切り出したのだから、言われたコチラは何か質の悪い冗談程度に受け取ったのだが、今、目の前にいる2人の人物がその為にわざわざこのような場所に──それも、幾度となく呼び出すとは考えにくい。 「エリクシール王国の正規軍は、何処ぞの馬の骨とも知れない平民を指揮官に据えなければ成らないほど人材不足とは思えないがな」 「残念ながら、正規軍には優秀な人材が余りある程に足りておる」 目の前の2人の内の1人、白髪に立派な白髭を生やした、大柄の如何にも武骨で厳格そうな武人風の男が言った。 「あなたには正規軍ではなく私設軍──つまりは傭兵軍団を立ち上げて頂きたいのです」 そう言ったのは、もう一人の男。裾の長い文官用の長衣を身に纏った、エッジと同じくらいの背に、より線の細い体格をした、一見すると吹けば飛びそうな程にひ弱そうな男だ。
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