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「……素敵なお言葉ですね。姫は桜、大好きです。義高さまは?」
しばらくの沈黙の後、大姫は幼い頃の義高と被る感想を言った。それをどこか苦く受け止めながら義高は微笑んだ。
「……私も桜は好きだよ。木曽は桜の木が多く、とても綺麗なんだ。姫にもいつか、見せたい」
「約束ですよ? いつか一緒に見に行きましょうね!」
「ああ」
桜が咲き誇るような大姫の笑顔に、義高は散り逝く儚きも気高い笑みで返した。
* * *
しかし、その約束は果たされることはなかった。
翌年の元暦元年(1184年)正月、和議も虚しく義仲と頼朝の仲は破綻し、義仲は頼朝が送った軍によって都の郊外で敗死。
同年4月21日、頼朝は将来の禍根を断つべく義高の殺害を決める。
4月26日、落ち延びようと画策するが虚しく、義高は討ち取らてしまったのだった。
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