あの日みた桜

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   桜を見据える、その背中。  挑むように、睨むように――恨むように。  当時の私には頼もしく、大きく感じたけれど――微かにその背が震えていたのを、私は気がついていた。 「……義高さま、幼い私はわかりませんでしたが今ならわかります」  微かな想いを乗せて、呟く。  決して、答えのない答え。だけど、問わずにいられない想い。 「……私も桜の様に生きられたでしょうか?」  儚き灯はゆらりゆれて、そして――  * * *  建久9年(1197年)  源頼朝の長女、大姫。二十という若さで死去。  
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