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「……義高さま、泣いていらしたの?」
義高の元へ参じた大姫が恐る恐る声を掛けた。
華やいでいた表情が不安げに瞳を揺らし、義高を案じている。
義高はそのとき初めて、自分が泣いていたことに気がついた。
慌てて、袖で涙を拭ったが大姫に涙を見せてしまったことを義高は恥じる。
「……姫に、無様な所を見られてしまったな」
「そんなことない!」
義高の隣に腰掛けた大姫は小さな頭を大きく振り、一生懸命否定する。そのあまりの真剣さに義高は小さく笑った。
東の空から陽光の光が漏れ始める。
穏やかな日差しが桜の薄紅にあたり、輝く。
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