儚き桜の日

5/7
前へ
/12ページ
次へ
  「……義高さま、泣いていらしたの?」  義高の元へ参じた大姫が恐る恐る声を掛けた。  華やいでいた表情が不安げに瞳を揺らし、義高を案じている。  義高はそのとき初めて、自分が泣いていたことに気がついた。  慌てて、袖で涙を拭ったが大姫に涙を見せてしまったことを義高は恥じる。 「……姫に、無様な所を見られてしまったな」 「そんなことない!」  義高の隣に腰掛けた大姫は小さな頭を大きく振り、一生懸命否定する。そのあまりの真剣さに義高は小さく笑った。  東の空から陽光の光が漏れ始める。  穏やかな日差しが桜の薄紅にあたり、輝く。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加