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「ちょ、また誤魔化すつもりか!」
バタバタと暴れれば、更に強く抱きしめられた。
「あのな、一回しか言わんから、ちゃんと聞いとけよ」
そう言われて渋々顔をあげると、マックの口が耳元に近づいてきて。
「好きやで」
そんな言葉が呟かれた。
「え…あ…」
そしてもう一度、
「ヒナはおれの特別」
目の前がチカチカとして頬と耳たぶがぶわーっと熱くなってくる。
「仕事行ってくるわな」
口をパクパクしている俺を体から離して、一瞬だけチラッとこっちを見たかと思ったら、
真っ赤な顔で部屋から早足に出ていこうとする後ろ姿に目頭が熱くなる。鼻の奥がツンとする。
マックが俺のこと…好き…、
脳の中でゆっくり整理されていく今までのマックの言葉に、ようやく追いついた頭。
「…好き…俺も、好き!」
出て行く背中に必死に叫んだ言葉に、
マックは振り向いて、やっぱり真っ赤な顔。
「…お前声デカいわ。…行ってくる」
「ごめ…、行ってらっしゃい」
嗚呼、なんやろう…心臓がうるさい。
“ ヒナ ”なんて、滅多に呼ばないくせに。俺が名前で呼んだら怒るくせに。
マックを見送った後、しばらく閉まった扉に無情に手を振り続けていたのは誰にも言えない秘密。
END
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