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「……っい……」
そのまま何故かアーセナルの手にはじわじわと力が入っていく。
「アーセナルそんなに力入れたら痛いって…、俺はほんまに平気やから…」
早くその箱を持って車に行けと視線で促すけど。
アーセナルの目はとうに虚空をさ迷って瞳孔も開ききっていた。
スッと俺から離れてフラリと立ち上がったかと思えば。
ゆっくりと腰から抜かれたリボルバーを俺を撃った相手に向けた。
『嫌だ…!やめてくれ!わ、私はこんなところで死にたくない…!』
俺の背後で騒ぐそいつの声。
パンッ!
アーセナルの手に力が入るのが見えて、それと同時になった発砲音。
『ぐあああっ…!』
聞こえてくる男のうめき声。
おかしい。
アーセナルが人を撃つときは、完璧に急所に入れるはず。撃たれた人間は声もなく死んでいくのが殆ど。
焦って振り向けば足首から血を流して泣き叫んでいる男の姿。
「アーセナル、おまえ、、」
アーセナルを見上げれば、もう目に光は入っていない。
こいつ…わざと急所を外してる。
「やめ…!」
俺の言葉なんて、もう届いていない。
それからその場が血の海になるのにそう時間はかからなかった。
あの時と同じ…。
たまらずに目を瞑った俺の背後からは、男の叫び声がしばらく響いていた。
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