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「もうええから…!ごめん…アーセナル…辛いこと話させてごめん…」
腕の中で震える体を、さらにギュッと抱きしめて、溢れそうになる涙を抑えた。
僕がここで泣いたらあかん。
僕が強くならないと。
一番辛かったのはアーセナルなのだから。
ずっと独りぼっちだったのはアーセナルなのだから。
「…っもぉ…目の前で誰も失いたくないっ…」
「わかってる…、大丈夫やから…絶対僕らはアーセナルの前から居なくなったりせえへんから…」
こんな辛い過去を、この小さな背中に抱えてきたんやね。
「もうアーセナルは独りじゃないよ。アーセナルより先に死んだりしないし、絶対悲しい思いもさせへんから。僕でよかったらいつでも側にいるから」
誰よりも独りの寂しさを知ってる人だから、
誰よりも大切な人だから。
理由なんてないけど、こんなに頼りない僕だけど、今気づいてしまったから。
「僕に甘えて下さい…っ」
やっぱりあかんわ…涙ってそんなに簡単に抑えれるもんちゃうねんな。
気づけばアーセナル以上にグジャグジャな自分の顔。
「何でお前が泣くねん…」
「だ、って…無力な自分が悔しくてっ…!」
「………はっ、ばーか」
やっと笑った、その顔が見たかった。
まだきっと、僕の想いは届かない。辛い思い出を消せる程の力はない。
今はまだ蕾やけど…きっと…。
全部忘れさすくらい、大きな大きな明るい華を、いつかあなたの胸に…、
「……ありがとう…頼むわ」
咲かせてみせます。
END
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