『ハリネズミ君の証』

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すっかり落ち込んだハリネズミ君。 『僕は何も悪いことしてないのに』 『何で僕だけトゲトゲなんだろう』 丸く丸くなって、お家にとじ込もってしまいました。 森に、冬じたくの季節がやってきました。 イノシシ君も、リスさんも、森の動物たちは、大忙しです。 冬までに、たくさん食べ物を貯めておかないと、冬の間は、食べ物が無いからです。 長い長い雨が、森に降りました。 もうすぐ冬だというのに、雨のせいで、森はプールになってしまいました。 困ったのは動物さんたちです。 食べ物の、ドングリや、木の実が落ちてきても、雨に濡れてしまって、食べられないのです。 『これじゃ腹ペコで、冬眠できないよ』 動物さんたちは、困ってしまいました。 そこへ、ハリネズミ君が、トボトボと歩いてきました。 皆、ハリネズミ君のトゲトゲが怖くて、誰も近付こうともしません。 ハリネズミ君、悲しくて悲しくて、泣きながら、お家に帰ろうとしました。 と、その時、 『すぽっ』 『すぽすぽっ』 何かがハリネズミ君に落ちてきました。木の実です。ハリネズミ君のトゲトゲに、 『すぽっ、すぽっ』 と、どんどんと木の実が刺さっていきます。 ハリネズミ君のトゲトゲは、木の実で隠れてしまいました。 それを見た、ウサギさん、おっかなびっくり、 『ハリネズミ君、木の実、もらっても良いかな?』 ハリネズミ君は、驚きました、 『僕のトゲトゲが怖くないの?』 ウサギさんは、 『全部のトゲトゲに、木の実が刺さってるから、怖くないよ』 ハリネズミ君は、嬉しくって嬉しくて、 『良いよ。全部あげるよ』 ハリネズミ君が歩くと、行列ができました。 トゲトゲに、木の実がなくなると、イノシシ君が、木に体当たり。 『ドサドサ~』 『すぽすぽ~』 木の実をもらった、森の皆は、 『ありがとう』 と、ハリネズミ君と握手をしました。 握手をしたのなんて、生まれて初めてです。それも、トゲトゲのお陰で。 今度は、ハリネズミ君、嬉しくて泣いてしまいました。 森に春がやってきました。ハリネズミ君は、というと…。 森の皆と、遊んでいます。もう誰も、ハリネズミ君を怖がったりしません。 なぜって、ハリネズミ君のトゲトゲに、森の皆が助けられたのですから。 それに、ハリネズミ君のトゲトゲは、イノシシ君のツノや、リスさんの前歯と同じで、ハリネズミ君の『証明書』なのですから。
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