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そんな俺が同窓会に来た理由は。
「桐島!久々じゃん!」
「きゃー桐島君久しぶり」
「お待たせ、もうみんな出来上がってるな」
俺は騒がしい固まりを見つめた。輪の中心にいる男はあの頃より大人びた顔をしていた。
「桐島忙しそうだなぁ」
谷は輪の中心を遠くから観察するように眺めた。まるで虫や魚を観察してるみたいな目はあの頃と一緒だった。
「…あいつ、目立ってたからね」
「頭も良くって運動もできたからな。藤崎、結婚はまだしないの?」
「彼女いないからな」
俺はドリンクのメニュー表を見つめた。カクテル、焼酎、日本酒。
お酒が飲めるようになったって何が変わったのか。
あの頃と今、ここにいる奴らも俺も立場は変わっても根本的なところは何一つ変わらない。
「谷は何してんの?」
「俺?俺は普通にサラリーマンだって。農薬や稲刈り機を売ったりしてる」
谷は店員を呼ぶと酎ハイを頼んだ。俺はついでに梅酒を頼むと近くにあった唐揚げをつまんだ。
冷めた唐揚げはあまりうまくなかった。
「あそこにいる高田は中学の教師で佐野は花屋。下北は保育士、桐島はIT企業に勤めてて…」
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