月下に飢える(アルケイン)

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「ぺっぺっ!!……あー…久しぶりに血なんか吐いた…」 「貴様、その体は何だ」 「何ってなんですか、ただの人間っすよ」 「ただの人間がドラゴンの爪で腹に裂かれて平気な訳が無いだろう」 「そんなこともありますよ」 「俺は貴様が産まれる遥か遥か昔から生きているが、そんな人間は僅かしか見たことは無い。…貴様、あの不死者の血族か?」 「血ぞ……──まさか。私があの人の子供?孫?考えたらゾッとしますね」 「ならその体は何だ、まさか貴様の物ではないのか?別人の体か?」 「それってアンタがやってるような高等な魔導のこと?そんなの私に使える訳無いじゃないっすか。生まれつきの体ですよ」 「では貴様は、何だ」 「言ったでしょう、私は人間だって。ただ流れる血が異常なだけで、老いるし、死ぬ。いつかは」 「血…?」 「まぁ、ある意味、血が繋がっていると言えなくも無いですけどね」 「まさか…」 「吸血鬼って知ってますか、魔女さん。血を好む化け物なんすけどね、実はワインも好物なんですよ」 「貴様──」 「……なぁんて、ね」 「…は?」 「はいはい、正体不明でいいじゃないすか。私なんて所詮、一兵士。直属だろうと将軍じゃないし、アンタが気にするような存在じゃないですよ」 「待て、俺は…!」 「そんじゃ、さよなら。部下に言っといてくださいよ、助けた借りはいつか返してくれってね」 「不死者!!……逃したか」 血は、絆で、証で、呪いだ。  
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