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懐かしい匂い、優しい暖かさ、ユウは彼女に包まれ寝ている
まだまだユウが小さかった頃の話、LFG計画がTE計画にシフトしてから少したった日
まだ、ユウが五体満足だった頃の話
ユウは父親と母親の顔を知らない、しかし、会った事がないというわけでもない
別に父親を父親として母親を母親として認識していない、というわけでもない
ただ、ただ単に頭の中を弄られ過ぎてそういった暖かい記憶がガリガリと削られているだけ
「ユウ……私の、私だけのユウ、私だけの'花婿'」
彼女はユウを抱きしめ、その暖かさを貪るように力を強くする、ユウが起きない程度に
「貴方は選ばれた、貴方は選定された、貴方は私を使えるたった一つの存在」
銀髪に褐色の肌、その整った顔立ち、ユウを抱えていてわからないがそれなりに豊満な体つき
絶世の美女と言われても過言ではない、まさに妖精の女王といった風情
「私は貴方にどんな扱いを受けたっていい、私は貴方になら道具扱いされたって構わない」
そう、涙しながら彼女はユウの柔らかい髪にほお擦りする
「だけど…、お願いだから、私を、私を捨てないで、ユウ、道具であってもいいから、この'化け物'の私をそばに置いてね……」
彼方の記憶、ユウが覚えてもいない一場面、しかし彼女だけは覚えている、彼女を彼女として形成する記憶だから
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