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「ユウ君は人格者が嫌いかな?」
「人の道を知ったような口を聞く奴が嫌いなだけだ」
それは困った、と男はアルミ椅子から立ち上がり、ユウに紙切れを渡す
てんで受け取る気はユウには無かったが、男はユウの胸ポケットにねじ込む
「もし、君が私に協力したくなった場合、それに書いてある場所に行くと良い、1週間の研修の後、部隊に配属される流れだからね」
「研修?直接入れるわけじゃないのか?」
ははは、と男は笑い、椅子を担ぎながら
「そこまで簡単に進むほど私の所属する組織は漫画的ではないさ、ちゃんと手続きはあるよ」
それでは、と男は去っていった、最後の最後までメイヴは怪訝そうな表情から脱せず、ユウはピンと来ないまんまだった
正直、ユウはどちらでも良い、協力しようとしなくとも何かが起こり、深い所まで巻き込まれるのは理解しているのだ
だから、男はユウに'言わなくても良い話'をしたのだろう
『お前は巻き込まれるぞ』と忠告されたような物だ
協力すれば組織で、協力しなければ単独で事に当たるだけなのだから
ユウの思惑だけであれば、の話だが
「メイヴ、奴に協力するぞ」
「ユウ、何か思惑でも?」
「思惑でも何でもない、緊急的な事情だよ、どうせアイツは俺達が今すぐにでも此処から出れるように手を打ってるだろうよ」
「緊急的な事情?」
メイヴが見上げるなか、ユウは立ち上がり、胸ポケットから紙切れを取り出し確認
やはり書かれていたのは管理局関連施設の住所、あの男が管理局の人間であることを物語っていた
「なぁに、いつもの事だ、生活費が無いんだよ、このままじゃ死ぬしね」
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