今日こそ僕は!

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「それでは皆さん準備はいいですか? カウントダウーン! 5!」 サンタの女性が会場に向けて手の平を突き出す。 「4!」 「「3!」」 会場から合わせてカウントダウンを言う声が聞こえだした。 「「「2!」」」 椿が合わせて叫び出す。 「「「「1!」」」」 楓や桜、僕も合わせて叫んだ。 「「「「「「「0!」」」」」」」 会場の全員が叫んだ瞬間、 ツリーに、明かりが灯った。 吹き抜けの夜空に映えるきらびやかな装飾。 眩しいほどの、色様々な光。 思わず息を飲むほど綺麗だった。 しばらく見とれてしまっていた僕だが、椿の声に現実に戻された。 「なあ、なんやあれ?」 と、ツリーの方を指差している。 その指の先を目で追うと、その先には……、 「あった……。」 隣で桜が呟いた。 椿の指さした先には、 桜の編みぐるみがあった。 それも、赤色と青色の二つ。 煌々と輝く電飾の中、その二つの編みぐるみは一緒になって飾られていた。 「ねえ、あれ、どういうこと?」 楓がこっちを向いて尋ねる。 桜はじっと編みぐるみを見つづけていて、信じられないという様子のままだ。 どういうことか考え出した僕は、ふと司会の女性を見て閃いた。 「たぶん……、たぶんなんだけど、桜は駅のプラットフォームの、 あの人混みの中で編みぐるみを落としたんだ。 僕は桜が紙袋を持った女性とぶつかったのを見たんだけど、そのとききっとその紙袋のなかに編みぐるみが入ったんだよ。 だから、プラットフォームには落ちていなかった。 そして、桜がぶつかった女性はツリーの飾り付けをする人だった。 両手に持っていた紙袋の中身はツリーの装飾品。 その中に紛れ込んだ編みぐるみが、ツリーの装飾品に間違われて飾られたんだよ。 青い編みぐるみも、数年前に同じようにしてツリーの装飾品に紛れ込んでたのかもしれない。 あくまで、全部予想なんだけどね。」
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