今日こそ僕は!

9/9
前へ
/10ページ
次へ
「そんな奇跡みたいなことあるんか知らんけど、とりあえず編みぐるみが見つかったことは確かや。 あのサンタの姉ちゃんに言って、編みぐるみ取ってもらおう!」 と、椿が前へ進もうとしたところに、スッと桜の手が伸びてきた。 「待って。 あれは、あのままにしとこう。」 「えっ!どうして?せっかく見つかったのに!」 桜は編みぐるみから目を離さずに、淡々とした口調で話した。 「あれは、あそこで飾られるのがいいんだよ。 こうやって皆に見てもらえて、 皆に喜んでもらえて。 青いのが残ったままなんだったら、きっと毎年同じように飾られてるってことだよね? だから私、これから毎年見に来る。 そうして、皆が編みぐるみを見て喜ぶ姿を見るんだ。」 そして、僕らのほうへ微笑みかけた。 「その方が、私も、編みぐるみも幸せなんじゃないかな?」 綺麗な、笑顔だった。 クリスマスツリーなんかよりも、ずっと。 ふふふ、と椿と楓が顔を見合わせて笑い出す。 僕も、桜も笑い出した。 こぼれるぐらい、笑った。 そして突然、会場のどこかから歓声があがった。 「ん?なんやなんや?」 そのとき、頭にある感触を感じた僕は頭上を見た。 「あ!雪だ!!」 吹き抜けになっている夜空から、真っ白な雪がゆっくりと舞い降りてきた。 真っ白な妖精が会場を包み、歓声をあげる観客のボルテージは最高潮に達した。 「ホワイトクリスマスだね……。」 と、桜が降りてくる雪を眺めながら呟いた。 その様子をみた僕のなかから声が聞こえた。 なあ、今ならいけるんじゃないか?告白。 急激に跳ね上がる心拍数。 行くなら、今しかないだろ。 そうだ、いけ! いけ!!! 「なあ、桜。」 「ねえ、柳くん。」 あれ? 「ちょっと話があるんだけど…」 「ちょっと話があるんだけど…」 あれあれ? 椿と楓が顔を見合わせて微笑んだ。 これって、もしかして!? 「僕、桜のことが、」 「私、柳くんのことが、」 「「好き。」」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加