十二

15/15
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/243ページ
学校中に響き渡るのではないかと思う程鳴り響いた悲鳴は、授業中の者達を驚かせ、生徒達はなんだ、なんだ?と声を上げ、廊下に飛び出してきた。 「谷・・・?あ、ユカ!大丈夫か?!」 一番乗りで廊下に飛び出して来た優は、倒れている谷を不思議そうに見て、次に腰を抜かして怯えている由佳に気付いた。 「おい、ユカ!大丈夫か?!」 「す、優ちゃん・・・はやく、きゅ、救急車・・・はやくっ・・・!」 由佳は、駆け寄って来た優の腕にしがみつき、体を震わせてはいるが、意識ははっきりしていた。 谷の容体を心配して、蚊の鳴くような声で救急車を呼ぶようにせがんだ。 「わっ、なんだこの血!えっと、991?199? 救急車って、何番だっけ?!」 谷の体の下に溢れだす血を見て動転した優は、携帯電話を取り出しながら、救急の番号を思い出せずにいた。 この様子を近くで見ていた翔介は、ぱっぱと自分の携帯電話を取り出し、119を押した。 『はい、救急センターです。どうしましたか?』 「急病人です。お腹を刺されてます。宝条学園まで来て下さい。住所は・・・」 翔介の冷静な対応を見た優は、ほっと胸を撫で下ろしながら、おもむろにシャツを脱ぎ始めた。 「こういうのは止血しなきゃだろ! ちょっとユカごめんな!」 腕にしがみついていた由佳の手を離し、脱いだシャツを谷の腹部に押しあてた。 「加藤も脱げ!」 「あ、ああ」 救急センターへの電話が終わったのを見計らって、優は叫ぶ。 翔介もシャツを脱ぎ、優には自分のブレザーをかけてやった。 「神嵜さん、急いでるのは分かるけど、下着姿は良くないよ」 「あ、サンキュ」 優は軽く礼を言いながら、翔介のブレザーを着こみ、必死に腹部を抑えつける。 「神嵜さん、ここは俺が抑えてるから。太田さんの傍にいてあげて」 「あ・・・あぁ、分かった」
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!