十二

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由佳の強い眼差し、強い口調。 それは、美しき母親と恐ろしい程似ていたため、光は口を真一文字に結びながら思った。 ――友達思いな発言をする所、亜理紗さんにソックリ。 イイ女になってきたなぁ・・・ 由佳の成長を喜びながらも、外の顔は険しくさせたままだった。 「忠告したからね。それでも仲良くしたいなら、由佳の好きにすればいいわ」 冷たく突き放すかのように発言する。 これも由佳のため、と光は思いながら高速道路を降り、学校までの往路に車を乗せた。 「気をつけて行ってらっしゃい」 「・・・行ってきます」 学校の近くに到着すると、光は冷たい表情のまま、由佳も難しい表情のまま、互いに別れた。 由佳の姿が見えなくなると、光の口元はみるみるうちに緩んでいき、最終的には気持ち悪い程にんまりした笑みを浮かべていた。 「いやぁー、うん!いい傾向だよ! これは、亜理紗さんに報告しないとだなぁっ♪」 クスクスと楽しそうに笑いながら、ハンドルを切り、ふじみ野にあるマンションへ向かった。 光が一人にんまりしていることを知らない由佳といえば。 下駄箱で上履きに履き替えながら、内心で文句を垂れていた。 ――なんで、あんな酷いこと言うんだろう。 光は、七海ちゃんのこと何も知らないのに! それに、勝手に調べるなんて酷い! 下駄箱の扉を乱暴に閉めながら、四階にある教室へ向かった。
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