十二

14/15
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/243ページ
由佳が四階に辿り着いた時は既に、二時間目の授業も半ばに差し掛かっていた。 ――二時間目は・・日本史だ。 光に対するイライラも収まり、日本史のことを考え始めた由佳。 一番奥にあるA組の教室へ向かおうとした所、教室から出て来た者が二人いた。 それは、七海と谷だった。 由佳は驚きながら二人を見て、足を速めた。 遠くから見ても、七海の具合が悪そうに見えたのだ。 「どうしたんだ、麻生」 授業を中断させた谷は、具合悪そうにうずくまる七海に声をかけた。 だが、七海は苦しそうに息をするだけで、返答しなかった。 「おい、立てるか?」 谷は困惑の表情を浮かべながらしゃがみ込み、七海の顔色を伺った。 「熱はなさそうだが・・・苦しいんだな?過呼吸か?それとも・・・っ!」 七海の額に触れ、熱がないことを確認した谷。 立てない程苦しいなら、抱えて保健室へ持っていこうかと考えていた所だったのだが。 突然腹部に衝撃を感じた。 ドスッと何かで殴られたような感覚を覚え、その部分を見てみると、小さなナイフが突き刺さっていた。 「麻生っ・・・?」 突然すぎる攻撃に、谷は訝しげな表情で七海を見た。 すると七海は、氷のように冷たい瞳を携え、こう呟いた。 「私を子供扱いしたからよ・・・」 七海は冷たい声を出し、突き刺したナイフを勢いよく引き抜いた。 その瞬間、腹部から鮮血がはじけ飛ぶ。 七海の顔や制服に、白く塗られた壁に、廊下に飛び散る赤黒い液体。 それを間近で見ていた由佳は思わず叫んだ。 「いやぁーーーーーー!!」
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!