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「キョン君」
長門の隣に立ち、窓から入り込む太陽光を頼りに、長門から借りた本を読んでいた俺は、遅れて参上した古泉に気付かなかった。
「いつの間にいたんだ」
読んでいたSFものの本を閉じると、目の前に古泉の顔が表れ、俺は息をのんで一歩後ろに下がった。
「近い」
「さっきからここにいましたよ」
マジか。
くそ、読書に集中しすぎていて気づかなかった。
「正直驚きましたよ。いつもはこんなに近づいたら殴るなり叫ぶなりされているのに」
「気色悪いんだよ」
うんざりした風にため息をつくと、古泉が少し悲しそうに眉を下げ、一瞬にしてまた微笑を作り直す。
…そんな顔も、一体どれだけ見てきたんだろうな。
「古泉、ちょっと付き合え」
「え、」
確かに、普段浮かべない古泉の表情が見られるのは嬉しいけど。
「どうかしたんですか?」
部室から退室し、扉を閉め、俺は古泉の両手の動きを封じ、
「目、閉じろよ」
目を丸くした古泉の唇に、自分のそれを重ねた。
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