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名前を呼ばれた気がして、反射的に振り返ると、そこには、古泉に抱きつく女子の姿があった。
胸を、きつく引き絞られるような痛みがおそう。
「どうしたんですか?」
「えへへ、会いたいからきちゃった」
何がきちゃった、だ。
今古泉は部活中なんだ、今すぐ帰れ。
…なんて、言える訳ない。
「部活は平気なんですか?」
「一樹君に会えたから平気ー」
女子は、古泉の首にさらに深く抱きつき、嬉しそうに甘えたような声を上げ、古泉に話しかけ続ける。
それだけなのに、俺は今にも泣きそうになった。
「ちょっと外行ってくる」
思ったよりも、きつく苛ついた声になってしまった気がしたが、俺は早くそこから離れたくて、鞄を持って部室を飛び出した。
「キョン君!?」
朝比奈さんに呼び止められても、このときだけは止まれなかった。
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