unrequited love

4/5
前へ
/29ページ
次へ
泣きそうで、泣きそうで、俺は旧館の人がこなそうな教室に飛び込み、床に座り込んだ。 間もなく頬を熱いものが伝い、のどの奥から嗚咽が漏れる。 胸が苦しい。辛い、痛い、泣いているのに、ちっとも胸が軽くならない。 それでも辛くて、俺は膝を抱えるようにして、鼻水をすすりながら、涙を流し続ける。 けれど、それも長くは続かなかった。 「キョン君、ここですか?」 前の扉から、愛しい人の声が聞こえ、俺は泣くのをやめ、ばっと顔を上げ、 「どうして、泣いてるんですか…!?」 俺の前にひざをつく古泉に、目の奥がまた熱くなるのを感じた。 「こんなに泣いて…」 不意に、伸ばされた手をパチンと叩きおとす。 弱々しいそれにも、古泉の手は動きを止め、俺の頬から離れていく。 「触るな…」 中途半端な優しさほど、苦しいものはない。 現に、今伸ばされた手を愛しいと思ってしまった自分がいるんだ。 そして、愛しいと感じた瞬間、そんなのはダメだと、自分の感情を傷つける自分がいる。 「苦しいんだよ…」 また涙があふれ、俺は古泉に背中を向けるようにして膝を抱えなおし、また嗚咽をもらした。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加