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「ライ君…今の曲とか全部自分で?」
もうすでに外は薄暗くなり始めていた。
ちょうど窓から眩しい夕焼けが顔を覗かせていた。
ライはその夕焼けを浴びながらサックスを丁寧に手入れをしながらケースにおさめている。
「あぁそうさ。
その時の気分や空間の温度や窓から見える景色、座ってる椅子の座り心地とかでどんな曲にするかをイメージする…そしてインスピレーションに任せて指を動かすんだ…」
ライは噛み締めるように言った。
「その場と一体化するあの感じが大好きでさ、特にこの教会のこの部屋は俺にすごく話しかけてくれるからよく来るんだ。」
ミノルは楽しそうに話すライの横顔を見て微笑んだ。
「明日もここに…?」
ミノルは静かに聞いた。
ライは少々驚いたようにミノルを見て、またすぐサックスの手入れにはげんだ。
「明日はぁ~…今くらいの時間帯にしか来ないと思う。」
「そっかぁ…じゃあ僕はまた、ライ君のサックスが聴こえて来たらここに来るよ。そしてたくさん歌を歌うんだ。」
ミノルは言った。
ライはまたまた驚いたようにミノルを見て、クスッと笑った。
「お前…変なやつだな。」
「どこがさ~~?」
ミノルは両手を広げて言った。
ライは微笑んだままサックスをケースに仕舞い、背中に背負って立ち上がり、
「お前が最初に乗せた歌詞とメロディライン。最高だった。あれはその場で?」
と言った。
ライは意外に長身でミノルを大きく見下せるほどだった。
ミノルは嬉しそうな笑みをこぼして、
「うん!感じたままに!」
とパーカーの襟を握りしめた。
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