自責の念

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「大体うちはどんな顔して会えばええん?  ――うちがおらんだら、アイツは死なへんだやんか」 そう言って、ベッドの上にうずくまる麻里乃。 その姿はひどく小さく見えた。 ちゃうねん、麻里乃。 兄貴は今ごろはもう………… 喉から出ようとする言葉を必死に抑え込んだ。 ――『絶対に麻里乃には言うたあかんで』 それが兄貴と僕の最後の約束だから。 『……永輝。お前が麻里乃を幸せにしたってな』 辛いくせに笑って、僕の頭を軽く撫でる兄貴。 もう子どもじゃないんや、とその手を振り払ったけど、ほんまは怖かったんや。 触れた兄貴の手は細くて、めっちゃ軽かった。 タイムリミットまでそう長くはないのだと、体に教え込まれてるみたいやった。 あの人は自分の死ぬ時を知ってたんや。 せやから、兄貴は考えた。 『最期はさ、自分で選びたいもんやんな。  こいつのせいで、“はい、さよーなら”ってのは性に合わんのや』 自分の体を指差して、冗談を言うように軽快に笑っていたのに、兄貴の目は決して冗談やなかった。 『せやな……、出来たら麻里乃守って死にたいわ。  そしたら、なんかこう“生まれてきた意味”っての? そいつが見つけれそうやん。  あいつの泣き顔は痛いけど、最期の姿くらいはかっこよう見せたいしな』 そう呟く兄貴はどこか悲しそうで見ている僕が泣きそうやった。
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