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「っ、とにかく行くで!」
「やっ、永輝!」
嫌がる麻里乃の声を聞きながら、僕は麻里乃を後ろから抱き締めた。
「離して」
「……麻里乃、お願いや。
そう言うて兄貴の葬式にも出てくれへんかったやん」
ぎゅっ、と抱き締める手に力を籠める。
「兄貴は……麻里乃のことめっちゃ好きやった……
どんなになっても、兄貴は兄貴だ。やから、そんなに兄貴を拒否しやんといてあげてや」
僕も麻里乃が好き。
冗談のように言うと、困ったように兄貴は笑って言った。
『ごめんな、永輝』
今までやったら冗談でも兄貴に欲しいと言ったら、全部くれたのに。
麻里乃だけは違った。
隆太くんと麻里乃が付き合った時、家で声を押し殺して泣いとった。
泣いたことがないんやないかってくらい、笑ったとこしか見たことなかった兄貴が。
そんだけ麻里乃が好きやったってことなんや。
やから。せやから――――
「お願いや、麻里乃。
兄貴の四十九日に来て」
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