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剣幕に近い怒鳴り声に、奈緒はビクッとしながら急いでチャンネルを回す。
「ストップ!」
別のチャンネルに回そうとしたが、賢一はそこで止めるよう指示した。
奈緒はもう触れないようにとリモコンをテーブルに置いた。
賢一が食い入るように見つめるニュースを、奈緒も困惑しながら聞く事にした。
そのニュースには、とある大型スーパー店が映し出されていた。
そこは奈緒が住む街の中でも、中心地にある繁華街だった。
問題は、その大型スーパーと向かい側の高層ビルの間にある四車線道路だ。
そのアスファルト道路に、赤黒い液体が染み込んでいる映像を、奈緒は確かにその目に焼き付けた。
『今日の十八時頃――』
アナウンサーがその時間帯に起こった事故の状況説明をしている。
家族四人と食事をするため、繁華街に向かって四車線道路を横切ろうと横断歩道を渡っていた時に事故は起こったのだという。
少年は赤信号にも関わらず、横断歩道を横切っていたところ、乗用車が少年の姿に気付かずにそのまま走行していたのが原因だった。
少年は黒いジャンパーを着ており、発見に気付くのが遅かったらしい。
しかし、少年が轢かれる間際、突如横から飛び出してきた青年が少年を庇ったのだと、アナウンサーは感情の籠ってない声で淡々と述べていく。
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