その背中は、時に儚い、故に。(YH)

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「みーたん」 「何」 「…なんか怒ってる?」 「…別に」 「怒ってんじゃーん…」 どうしてこう、お前はそんなに。 「何でそんな機嫌悪いのよー」 「…お前が余りにも馬鹿だからだよ」 一人で抱えて、勝手に一人で悩むの。 「…みーたん」 「…馬鹿だよ、お前は」 辛い時でも笑ってなきゃいけないのが仕事、なのは解る。 俺らは曲がりなりにもメジャーバンドだ。 そしてゾジーは、黄泉は、淳は。 ボーカルという、バンドにおける声を担う主役な訳で、自分なりに通したい何かがあるんだろう。 俺なりに普段の馬鹿さに隠れたコイツの真剣さや努力、それ故の悩みとか、そうゆうのをちゃんと、見てきた。 なのにゾジーは俺の前でもヘラヘラ仮面みたいなツラして笑って、張り詰めている肩を休めない。 前はよく色々悩みを話してくれていたのに、最近そんな事を忙しさで誤魔化してめっきり態度すら見せようとしない。 俺はそんな風に真剣に音楽と向き合ってるお前がさ。 …凄いカッコイイと思ってるよ。 何時も馬鹿でスケベでどうしようもないけど。 人一倍歌への愛がある事も。 知ってる。 だけど。 お前がそのちっさい背中に背負ってる覚悟は、一人で抱えてるモンじゃない。 だからせめて、二人の時、いや、他のメンバーといる時位でも、頼ればいい。 「…何でそうやってヘラヘラ笑ってんの」 素直に泣けばいいじゃんか。 辛いなら。 「お前が今物凄く沈んでんの、解るんだからな」 「…ひつ…」 「隠してるつもりなら吐け。…何年一緒に居ると思ってんだよ馬鹿…」 辛いと言えばいい。 俺はお前のその辛い気持ち、受け止めたい。少しでも、お前のその小さくも逞しい背中を押してやれたらと。 「…ゴメン」 「…俺はお前の何なんだよ」 「…ゴメンね、みーたん」 「…馬鹿、…大馬鹿」 何時もは大変な事になるから絶対に自分からは抱き着いたりしないけど、今日は特別。 思いっきり抱き締めてやるよ。 だからちゃんと、そのちっさい背中のでっかくて重たいモン、一人で抱えてカッコつけてないで。 分け合おう。 「…お前の事、俺だって大好きなんだからさ」 何時も素直には言わないけど。 散々馬鹿馬鹿言ってるけど。 「ゾジーの辛い時、俺もちゃんと一緒に居たいから」 お前の色んなトコちゃんと見てるんだから。 俺だって、お前が俺を好きなのと同じ位、お前が大好きだから。
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