猫についての短い話

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塀の上を悠々と歩きながら現れた猫は、青い色をしていた。 青い猫と言えば、憶えがあるが、あんなに鮮やかな青じゃない。 底の深い海のような、濃い青をしていた。生温い風に短い毛が揺れて、まさに波打つ海のようだった。 さらに尻尾が不思議だった。そこだけが真っ白で、長い。体と同じほどの長さがあり、ゆらゆらと宙に浮くようだった。 それ以外は明らかに猫だ。 見間違いなどではない。明らかに猫だ。 私が口をだらしなくあけ、何をするでもなく、彼女(なんとなく雌猫に見えた)を眺めていると、彼女は気品高く、私の前を過ぎていってしまった。
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