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思うとすっかり日が暮れていた。
矢川さんは机の上に広げていた勉強道具を片付け始めた。
「そろそろ帰るとしよう」
がたん、と音を発てて椅子から立ち上がり、しゃんと立って、くるっと回ってスカートひらりと揺らし、すたすたと図書館を出て行こうとする。
「矢川さん帰るんですか?」と問うと、後ろ姿のままさっと片手を挙げ、グッドバイ、と言って帰っていった。
「矢川先輩、相変わらずかっこいいですね」
図書館の出入口を凝視していたら、隣に座っていた薫が手を、わざとらしく、祈るような格好に組んだ。
私はそんな事は考えなかったから、何も返事をしないでいると、薫は小首を傾げて、私たちもそろそろ帰りますか、と言った。
私は窓の外を一瞥して頷いた。
外は大分暗くなっていた。ちょうど窓のむかい側に見える部室棟の廊下では部活動の生徒たちがあわただしく片付けをしていた。
薫は勉強道具を鞄にしまい始めて、私は勉強はしていなかったので、読んでいた本を本棚に戻しに行くことにした。
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