図書館の夜

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私の通う学校の図書館は中々広い。また、本来ならば図書室と呼ぶはずなのに図書館と読んでいるのだ。 初めての生徒ならば迷ってしまうほど広く、森の木々のように本棚がにょきにょきと生えている。 私の場合は普段より使いなれているので、本棚から持ち出した本を問題なく元の位置に戻すことなどぞうさもない。 本棚を三つすぎたら左に曲がる、そして本棚二つ分進み今度は右。そのまま突き当たりの本棚まで行けば、そこが目的地である。 海外の文芸作品が並ぶ棚で、利用者が少なく、私が取り出した箇所だけ隙間が空いているはずだ。 本棚は七段になっていて、私が取り出したのは三段目の右端だ。 ところが、どうしたものか、いざ本を棚に戻そうと思うと隙間がないのである。 こいつは困った、とよく見てみると、隙間だらけも隙間だらけ、本が一冊も並んでいないのだ。 それは三段目だけではなく、その本棚には一冊も本がないのである。 幾分不審に思い慎重に観察すると、本棚のそれぞれの段にはもっさりと埃が積もっている。 これは本棚を間違えてしまった。 一旦薫のいる場所に戻ろうと思い、体を反転させて足を踏みだすと、どこからともなく大きな本棚が現れて通路を塞いでしまった。
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