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「――――告げる。
汝の身は我が元に、我が運命は汝の剣に。大手企業口(聖杯)の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七転、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――!」
文句なし……! 手応えなんてもう、釣り竿でクジラをつり上げたってぐらいパーフェクト!
と、受話器の前で華麗優美の姿には似合わないガッツポーズをし、遠坂凜こと赤い悪魔は確信していた。
良い、派遣社員(サーヴァント)を引き当てた。と。
こっ恥ずかしいセリフを言ったのは規定であり、それさえなければなんで無人受け付けのオペレーターにこんな事を言わなければならないのか? 冷静に考えれば考える程、ガッツポーズを含めて遠坂は羞恥より顔を赤く染める。
今更照れ恥ずかしい思いをしていれば、電話口から『それでは派遣社員を派遣いたしますね』という例文が一言述べられた。
そして、通話がそこで切れる。
「はい……?」
あんだけこっ恥ずかしいセリフを言わせておいて、派遣社員のコンタクトの方法くらい説明しなさいよ! と遠坂は腹を立てた。
加えて、なんか庭の方から警報機が鳴っているのに気付く。
「なんなのよ――――!」
走った。頭の中を空したまま遠坂は走った。地下室の階段を駆け上がって庭へ急ぐ。
「庭、荒れてる!?」
庭の景観は惨状であった。
植えてあった木が根本から折れて玄関におおい被さり、中から出る者の行く手を阻んでいる。羞恥、立腹を経た遠坂は我慢できず。
「――あぁもう、邪魔だこのおっ……!」
その木を蹴っ飛ばして、音が鳴った庭に踊り出れば。
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