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庭はメチャクチャになっていた。何かが屋根から落ちてきたのか、辺りは枝と割れた植木鉢にまみれており、偉そうにふんぞり返っている白髪の男が1人。
「………………」
アレ、間違いなく下手人だ。
「…………それでアンタなに、不法侵入者?」
「開口一番がそれか。これはまた、とんでもない雇用主(マスター)に引き当てられたものだ」
赤い外装で褐色肌のそいつは、やれやれ、なんて大げさに首をすくめた。オマケに「これは貧乏クジを引いたかな」とも呟く。
……断言しよう。こいつ絶対に性格ゆがんでいる。と遠坂は感じた。
赤服の言葉から、彼が派遣社員という事を理解した遠坂。性格、態度、まぁそれはまだ我慢できる範囲だと処理して。この赤服の態度に気圧されては駄目だなと感じ、頭を切り替えた遠坂は尋ねる。
「――――確認するけど、貴方、わたしの派遣社員で間違いない?」
「それはこちらが訊きたいな。君こそ私のマスターなのか。ここまで乱暴な呼び出しは初めてでね、正直状況が掴めない」
「私だって初めてよ。ていうか、庭をメチャクチャにしたのアンタじゃない!」
「……だがな、大手企業は呼び出しと同時に雇い主の元に着いていなければならないのが規則でな。
まさか、こんな灯りもない夜に、しかも屋根の上に放り出されたとあった。もう少し電話を掛ける時間を考えて欲しいものだ」
小言をこぼして雇い主に文句を付ける。どうやらこの男、屋根から落ちたらしい。
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