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「――――貴方の小言なんて聞いていないわ。わたしが聞いているのは、貴方がわたしの派遣社員かだけかよ」
「ほう、なるほどなるほど。自身の失点を流そうとする辺り、実に勇ましい。気概だけなら立派な雇用主だが――――」
「だ・か・ら、アンタの小言とかどうでもいいっていうの!
さぁ答えなさい、貴方はわたしの派遣社員なのね……!?」
ニヤニヤと小馬鹿にする態度に、遠坂は掴みかかってやろうかとする怒りを抑えて、再び同じ質問を投げたが。
「――――はぁ、短気なお嬢さんだ。少しは私の言葉くらい聞いて欲しいのだが」
ため息、そして質問に答えない。変わらずのふてぶてしさに、沸点の低い遠坂は震えた声でもう一度だけ訊いた。
「貴方は……私の派遣社員なの?」
「あぁ、形の上だけはな。故に形式上は君に従おう。しかし、話を聞かん雇い主の指示には従えんな。君はこの家の地下にでも隠れて、就活戦争が終わるまでじっとしていれば良い。
それなら、未熟な君でも浮浪者にはならないだろう」
やっと質問に答えと思ったら、次は雇い主への失望を述べて。わざとらしく。
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