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「いやぁ、KYって言ったの私なんだけどさ」
「お前かよっ!」
何年前の人なんだ、アンタはっ!
「でもさ、改めて考えてみるとさ……あの時のあの言葉はワザとでしょ?」
「決まってんだろう。誰があんな言葉をワザとじゃなく言えるんだよ」
あの時はどうにかみんなを鼓舞しようと必死だったからな。
リンドウさんが負けるほどのアラガミが現れだした。
あの時のゴッドイーター達が、そいつ等とまともに戦える状態ではないのは容易に想像できた。
だからこそ、あんな暴言をわざと吐いた。
深い悲しみや絶望よりも、きっと怒りの方がまだ彼らに戦う力を与えてくれるはずだから。
「それに、自称ムードメーカーだからな。あの場の雰囲気を作り変えるにはああ言うしか思い浮かばなかった」
今思えば、とんでもなく拙く幼い鼓舞の仕方だったと思う。
もう少しまともなやり方があったろうに。
「そういうところが稲瀬くんの良いところだって言ってるんだよ」
「……もっとわかりやすくお願いします」
つまりワザと暴言を吐くところがいいってわけですかい?
……傷つくぞ。
「仕方ないなぁ」と呟きながらリッカが僕を真正面から見詰めてきた。
「バカでもないのにバカみたいに明るく振る舞って、はしゃぎ易い性格でもないのに直ぐにはしゃいで見せて……チャラチャラしてるのは素だね。いつも女の子に声かけてるし」
「うぉいっ!! 僕は硬派な男だぜ」
「いつも声かけてる姿を見てるとね」
なぜリッカもレイリィも僕の硬派を認めてくれないのだ。
今まで恋人がいたことないんだぞ。
……涙で霞んで明日が見えない。
「ふふっ……心の底ではいつもみんなを支えようと考えてる。それが、キミの良いところだよ」
リッカは最後に、「素直に表現することはないけどね」と笑いながら付け加えた。
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