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それから数日後、珍しく丸々一日の休暇を得た第一部隊隊長レイリィ・レイル・ロードは、部屋に飾られた夕焼けの絵画を眺めながら何をするでもなく過ごしていた。
この部屋は以前、雨宮リンドウが使用していたが、レイリィが隊長に任命されると同時に明け渡されることとなった。
しかし、オシャレやコーディネイトといったものに全く興味がない彼女は、レイアウトや部屋を彩るアンティークの配置などは変えずにそのまま使い続けている。
「はぁ……」
不意に零れたため息。
それに気づいて彼女は考える。
なんでだろうなぁ。
悩みなしの能天気がわたしらしさなのに……。
レイリィはゆっくりと目を閉じて、少し前に起きた事件を振り返った。
それは……エイジス島で起きた一つの出来事。
人とアラガミの新たな可能性を指し示した、ひとつの別離れ。
少し前に前支部長が暗躍し進めていた『アーク計画』。
それは、選ばれた100人のみが生き残り、その他のすべての人類は死滅するという選民思想の究極形ともいえる人類の存続計画。
その計画にわたしは仲間と一緒に真っ向から反対し、そして潰した。
その選択が間違いだったとは思っていないし、後悔もない。
だけど、その選択を選んだ責任を感じることは多くある。
選ばれた100人は確実に生き残り、その後はアラガミの脅威も一切なくなる。
それは確かに、人類が次の未来を生きるための切符だった。
その切符を全て破り捨てたわたしは、他の切符を何としても手に入れなければならない。
手に入らなくとも、新しい切符が見つかるまで人々を守らなければならない。
例えわたし自身がどんなに傷ついたとしても……。
それこそがわたしの責任。
救いの方舟を壊したわたしの義務だった。
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