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「そうか。先日アラガミ化をした時は人間に戻れたらしいけど、それがいつまでも続くとは限らない。……佐野君。もし、彼が自分を本当の意味でアラガミだと認識してしまうとしたら、どんな切欠が必要になるかわかったりするかい?」
「切欠ですか…………可能性としては一つあります」
「それは?」
「以前、彼がアラガミ化せずに人を食べたことがありましたよね。今は無意識にその記憶を押し込めているようですが、それがフラッシュバックしてしまったらあるいは……」
アラガミ化している最中は辰嵩は意識を失っている。
その間に起きた出来事は一切記憶に残らない。
しかし、先日のアナグラ襲撃の際、辰嵩はアラガミ化せずに人を食べた。
それはしっかりと彼の記憶の奥底に眠っているはずだった。
「なるほど……彼にはしばらく討伐の任務だけに集中してもらおう。それに、ちょうどいい任務も来ていたからね」
「そうですね。私の方でもまだしばらくはカウンセリングを続けていきます。なにかありましたら、博士にも連絡を入れますよ」
「あぁ、頼むよ」
ふたりはそれぞれの職場に戻っていく。
佐野が恐れたその"切欠"がすぐに起きてしまうとは、露ほども思うことなく……。
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