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エントランスに繋がるエレベーターの扉が開くと、そこにはツバキさんが立っていた。
ツバキさんは厳しい表情で僕を一瞥すると「遅いぞ」と手短に注意をした。
「今回お前に行ってもらいたいのは救援任務だ」
「救援? アラガミに襲われている一般人の保護なら第一部隊の仕事ですよね?」
「一般人ならな……」
そう告げると、鋭い双眸でまっすぐに僕を見つめた。
「今回の救助対象は第一部隊の隊員だ」
「え……」
第一部隊。それってレイリィ達……?
背中に嫌な汗が流れる。
「いや、なに言ってるんですか。アナグラ最強のメンバーじゃないですか」
「そうだ。だが、第一種接触禁忌のアラガミを3体も同時に相手をするのは厳しいだろう」
「……どういうことですか?」
そのただならぬ雰囲気。ツバキさんの焦り。不穏な言葉からどうしようもない不安に駆られて、僕は問いただした。
「先ほどエイジス島に現れたスサノオを討伐に第一部隊の4名が向かった。だが、その後新たなアラガミがエイジス島に向かっているのがわかった」
ツバキさんがゆっくりと「そのアラガミは……」と続ける。
「第一種接触禁忌"アマテラス"と"アイテール"だ」
接触禁忌……それは、強大な力を持つために限られたゴッドイーターしか交戦する許可さえ赦されない。
強力かつ凶悪なアラガミ。
1体でさえ荷が重いアラガミが複数同時となるなら危険極まりない。
「なっ、撤退命令はどうしたんですかっ!?」
「第一部隊はまだスサノオと交戦中だ。今彼らがヘリに乗り込んだとしても落とされるのが関の山だろう」
「だからって……」
このまま彼らが3体も同時に相手をすることになれば、確実に死者が出るだろう。
最悪、全滅の可能性だって充分にある。
「だからこそ、お前に救援に向かってもらいたい」
凛とした声音で目をそらすことなくツバキさんは告げる。
その目は一切の迷いなく、僕なら大丈夫だという確信に満ちていて。
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