The third kind contact is tabooed

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そこにいたのは辰嵩ではなかった。 人でさえなかった。 人間と同じサイズだが真っ黒の身体。 のっぺらぼうのような顔は牙が何本も生えた口と、ふたつのうろのような穴。 一番目を引くのはその背中から伸びた十の触手。 ウロヴォロスの触手に似てグロテスクだが、それよりも細くしなやか。 なによりも、まるで手のように自由自在にソレは動いていた。 「ウオォォォォォ」 業火の中から現れた黒く気味の悪いアラガミは、全てを絶望させるかのように雄たけびをあげた。 異様を感じたのか、アマテラスが業火を球状に変えて放つ。 それを避けながらも前進し跳躍したアラガミは、アマテラスの顔の部分に当たる女神像に向けてナイフのような形をした右腕を突き刺した。 痛みで顔を歪めるアマテラスは苦し紛れに体を大きく回転させる。 回転の勢いと遠心力に吹き飛ばされたアラガミは、一度距離を置くと四つん這いの格好になった。 「な、なんだよ……あれ」 コウタが呟くのも無理はない。 黒いアラガミの背中から生えた十の触手。 それを束ね、一本の巨大なドリルのように形状を変えたからだ。 「ウガアァァッ!」 叫ぶと同時にドリルが弾丸の速さで飛び出す。 その速さに対してアマテラスの反応は遅すぎた。 気がついた時には、アマテラスの巨大な前足は貫かれ切断されていた。 ――――! 自重を支えきれず、叫びをあげて崩れ落ちるアマテラス。 そのアマテラスの女神像を覆いかぶさるようにして、黒いアラガミはマウントポジションをとる。 そして、束ねていた触手をばらし、再び細い紐状になった触手を振り下ろし刺し貫いた。 何度も何度も、黒い雨を降らせるように……。 黒い雨が降るごとに赤い血の花が咲き乱れた。
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